第一に、不動産の実物的な収益見通しは低迷しており、ここ数年でやっと回復した。
公示地価を見ても確かめられる。
上昇したのは、東京、大阪、名古屋と地方中核都市であり、地方部ではまだ下落を続けている地点が多い。
第二に、80年代の不動産バブルで地価があまりに高水準に達しており、その調整に時間がかかったということがこのことを「イールドギャップ」という言葉で表現する。
不動産賃貸料収入。
不動産価格と長期金利の差である。
東京では2%程度の水準となっており、「世界最高水準」と言われる。
「本来はもっと高くあるべき長期金利が人為的に抑制されている」と見ることもできるし、「高い収益率が見込まれるのは、企業の設備投資ではなく、大都市中心部の商業施設だけだ」と解釈することもできる。
いずれにしても、不動産収益率と金利水準の格差が不動産価格を押し上げていることは間違いない。
ここで注意すべきは、投機的取引ではないことだ。
なぜなら、イールドギャップを利用して、確実に儲かるからである。
こうした取引は、(広義の)「裁定取引」である。
「リート」(不動産を証券化した金融商品)と呼ばれる仕組みが、こうした裁定取引を容易にしている。
商業施設を対象としたリートが、たとえば、総額50億円で売り出されるとしよう。
リートの購入者は、50億円の投資で毎年1億円の収入を得るから、収益率は2%となり、銀行借入れで購入すれば、元手なしに利益が上げられる。
リートの販売者は、20億円の投資で50億円の販売収入を得られる。
リートの盛行を「バブル」とする意見に対して、関係者からは、「バブルではない」という反論がある。
たしかに、投機行動ではなく裁定取引である。
可能にしているのは低金利である。
日本は金利を正常化できないいずれにしても、低金利が資産市場を歪ませていることが問題だ。
低金利がつくり出した歪みは、不動産だけでなく、ほかにも見られる。
この章で述べた「円キャリー取引」がそれである(なお、裁定取引でなく、「将来円高にならない」ことに賭けた投機行動である)。
問題は、金融情勢が変われば、状況が一変することだ。
リートは、流動性を高める点では評価できる。
すぐに売れるから、逃げるのも早い。
したがって、金利が引き上げられると、不動産価格が大きく下落する可能性がある。
円キャリー取引の巻き戻しが生じると為替市場が大きく撹乱されるが、同様の問題は、その他の場面でも生じうるのだ。
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